【RP】天には桜、地には雪のそのあとで
眞守・天彩 2022年7月5日
天には桜、地には雪。
美しかった光景は戦場という前提があることでくろきつねの心には響かず。
なにより響いたのは、一人では生存すら危ぶまれた戦闘の結果であった。
死に戻りもせず戻ってこれたのは、味方を孤立させまいと立ち回ってくれている仲間達の尽力があればこそ。
無事新宿島に帰宅したくろきつねの少年は、自室の中で握った拳を開き、再びきつく握りこんだ。
◆眞守・天彩の独り言。
この依頼【
https://tw7.t-walker.jp/scenario/show?scenario_id=2876 】の後日談
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眞守・天彩 2022年7月5日
俺の中に確固としてあるのは、復讐心と、殺意と、そして決意であった。
父さんと母さんを殺したクロノヴェーダを、殺す。ぜったい殺す。
それでもこの世界は俺の日常を壊したままだだろうから世界に満ちたクロノヴェーダに殴りりかかってきりつけて殺してころしつくしてほろぼしてぜったいぜんぶころしてやる!!
取り戻す為の手段のはずが、復讐心で塗りつぶされる。
灼けつくような殺意はいつだって胸の奥で熾り火のように燻って、クロノヴェーダを目にしただけで燃え上がった。
眞守・天彩 2022年7月5日
燻る思いとともに、首から下げた眼鏡がゆれる。
ディアボロスになりたての時、血を浴びて走り回っていた時、同じ建物に暮らす悪魔憑きの男性が創造してくれたものだ。
これは楔で、安全装置(セーフティ)だった。
俺が復讐に灼かれても、これをかければ燃え上がる感情を閉じ込めておくことができる。
俺はクロノヴェーダを斬りつけたくて壊したくて殺したいけれど、…俺が死にたい訳じゃ決してないから。
大好きな日常を取り戻す前に死ぬわけには行かないし、たとえ死に戻りが出来たとしても――死という一線を越えた時の自分がどう歪んでいくかまったく分からなくて、死に戻りはしたくない。
眞守・天彩 2022年7月5日
『その熱は、一瞬の一撃に注ぐと良い
その方がより苛烈に一撃を加える事が出来るよ?』
雪と桜が舞う戦場の中で、おだやかを通り越してのんびりとも聞こえる声がはなった言葉を思い返す。
…眼鏡の件と言い、あの人には頭が上がらない。
走った戦場を思い返す。
…足りない。力が足りない。
たとえ感情を押し込めて、冷静さを取り戻して、息をひそめて一撃に全てを込めたとしても…俺の一撃は軽いんだ。
ギリ、と歯噛みする。
俺は元々、東京で暮らしていた中学生に過ぎない。
刻逆から刻まれた記憶の先の「俺」も戦う才能は持たなくて、恩讐だけで記憶の先から引きずってきた武器達は俺の手に見合うものではないと、俺はもう自覚していた。
眞守・天彩 2022年7月5日
俺に見合う力。
俺が振るえる力。
武器に頼るだけでなく、共に成長できる力。
あのクロノヴェーダに手が届く力。それが欲しい。
左腕に浮かぶ植物の刻印がきらめいた。
左腕の蔦めいた刻印は、記憶の先の父から継いだ、植物から愛されし加護だ。
俺にはみどりの声は聞こえないし、これだって父さんと母さんの息子だから、というおまけで与えられた加護である。
それでも、確かに「俺」に与えられたもの。
俺と共に伸び行く力である、という確信が何故だかあった。
眞守・天彩 2022年7月5日
みどりに囲まれたやさしくておだやかな場所。
俺の日常。
帰りたいところ。
みどりは、取り戻したいものの象徴のようだった。
――花や草木を戦闘に使うのは、本当はいやだ。
みどりを、俺の灼けつくような殺意に巻き込むのはいやだった。
穏やかな日々を喜んでいるだろうみどりを、連れて行きたくない。
でも、いつだって俺を、俺の家族を見守ってくれたみどりは、きっと俺の家族を取り戻したいと共に思ってくれるだろうから。
…いっしょに戦ってくれないだろうか。
眞守・天彩 2022年7月5日
やさしい気持ちと、助けてほしい気持ちと、甘えたい気持ち。
みどりに対して抱く感情たち。
それらの感情――相反する殺意が混じり合うのは、苦しい。
戦場で心の柔らかいとこをの気持ちを抱くのは、きっと苦しい。
一人でずっと駆け抜けられたらいいのに…そうできないほど戦場は広くて、俺は弱くて、なにかに頼らないと走り続けられないって、この前痛いほどに知らされた。
…その事実から目を逸らして走り続ける方が、多分もっと苦しい。
息を大きく吸う。
手を目より高く掲げる。
戦うために与えられたわけではない、慈しみで与えられた刻印に視線をあわせた。
俺には覚悟しか示すことができないから、まっすぐ見つめる。
眞守・天彩 2022年7月5日
「…みどりの声は俺には聞こえない。でも、叶うなら――」
おねがい、と懇願した。
きみたちが大好きなひとたちと場所を取り戻すから、そのために力を貸して。
ふわり、と掌から光がこぼれた。
花が咲く。
小さな花をたくさんつけた白いカスミソウ。
凛と咲き誇る青い薔薇。
なんの力もない花だ。
けれど俺には大切な人を思わせる花だ。
それを見て、泣きそうな顔で笑った。
泣けないから、笑って、礼を口にした。
見えないけれどきっと近くにいるはずの、みどりのきみたちへ向かって。
「……ありがとう」
眞守・天彩 2022年7月5日
獲得:「引き継がれしみどりの加護」
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