知らない家
白浜・轟 2021年8月18日
適当に割り当てられたマンションの一室は、二人なら十分の広さだった。
窓から見える空の青さがやけに目にしみる。
彼女の見ているスマートフォンの動画の音声が、うるさいのに懐かしい。
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終日・めづる 2021年8月18日
(ハッピーバースデーの歌、ケーキの蝋燭を消す少女、幸せそうな笑い声)
……ゴウくん。
終日・めづる 2021年8月18日
…………ごめんね。
白浜・轟 2021年8月18日
(そう言うと思っていたし、どうせ無意味だけれど)
……お前の、せいじゃない。
そんな風に言うな。母さんも父さんも、響も、お前のせいなんてひとつも思ってない。
終日・めづる 2021年8月18日
ちがうよ。きっと私のせい。
そう、全部、全部私の、
だって、じゃなきゃ、(ぽろ、と涙が零れる)
ごめんね、ごめんね、ゴウくん。ごめんね。
白浜・轟 2021年8月18日
(頭が痛い、金属音が延々と鳴っている。バースデーソングがうるさい)
……もう少ししたら、飯、食おう。腹減ってるだろ。
大丈夫、大丈夫だから。
(背中から抱きしめてやっても、どうせ泣きやんじゃくれないんだ)
終日・めづる 2021年8月18日
(ふわふわのモーラットが、少女の座るソファの隣でちいさく鳴いた) (おしまい)