Oíche

ミッドナイト・ショッピング

アザレア・クラン 2022年2月17日
𑁍܀

街よりも森が好きだ。
昼よりも夜が。
……後者に至っては好き嫌いの話ではないのだが。

このままでは知らぬことばかりだと、
己を奮い立たせ外へ出る。

――― 時刻は 1:00 a.m

人気のない大通り。
丁寧に敷かれた石畳を歩いている。
こんな時間でも街は明るい。
並んだ街灯がずっと向こうまで照らしている。
夜目も必要なかった。

これくらい静かなら、此処も悪くない。

𑁍܀

置型1:1(先着・どなたさまでも)
キリのいいところまで
または2週間以上沈黙で〆

場所:ショッピング街
時間:真夜中
天候:晴れ、寒い




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アザレア・クラン 2022年2月17日
(妙に足音が響く気がして落ち着かず、なるべくゆっくりと歩いた。)
(整えられた道。建物の造りも調和が取れている。形だけではなく、色まで。ここ一帯はショッピングの為に開発されたエリアだと、事前の調査で知った。)
……(大きな硝子を覗くと、マネキンが様々な衣服を纏って立っている。少し季節外れの、薄い布地。)(視線をスライドしていくと、高めの台に飾られた靴がある。)(歩きにくそう。足の甲が見えているし、留め具もない。踵は細くて長い。)
(それなのに。何故か目が離せなくなった。ガラスに触れ、もっと近付く。)
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淀橋・ニックス 2022年2月20日
(プレイリストを行ったり来たり、冷えた外壁に佇んでいた。イヤホンから届くのは慎ましい音量で、物音をかき消すには至らない。それなのに。目の前へ滑り出るまで、彼女の靴音を、僕は知らなかった。彼女とて僕を知らなかった。何故ならこの人は一心に惹き付けられているようだから)
(何に? 恐らくは服に。靴に。そういった物たちのうちの一つに。)

服、見てんの?
(藍色の髪とその背に、僕は不躾な声をかける)
0

アザレア・クラン 2022年2月20日
―――!(不意に声が掛かった。思いがけぬそれに、硝子に触れた手を離し、一歩下がる。街灯から逃げ、なるべく薄闇に紛れる位置に。)(それのどれもが、咄嗟で、反射的な行動だった。一拍置けば、はっとして。闇そのものの黒が、少年を真っ直ぐに見る。)
…… ごめんなさい。驚いた。
(言葉を切り、迷い、)…此処に来たのは初めてで、どれも物珍しくて。
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淀橋・ニックス 2022年2月20日
おっと。こっちこそごめんね。
(外したイヤホンを持て余しながら僕は薄闇を覗く。夜を凝らしたような黒い瞳が視える)

(尻ポケに押し込んだ右手を持ち上げ、こめかみを掻いて)
へへ。ここいらこの時間、ひといないからさ。声掛けちゃった。
(石畳に、四角四面の建物たちの狭間に、僕の弁明は良く響いた。彼女の警戒心に当たっては砕けるであろう間抜けた声だ。)

あー。そうなんだ。そういう店とか、あんまり知らない?遠くから来たんかな。
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アザレア・クラン 2022年2月20日
(声。姿。表情。仕草―― ひと通り目にして、身構えを解く。)……だから、この時間を選んだ。(外見で何を判断できるわけではない。が、目の前の人はまだ若く見えた。)
知らない。別の時代―― ディヴィジョンから、パラドクストレインに乗ってきた。此処では復讐者と、一括りに呼ぶんだろう。(夜色の髪から覗く尖耳は、わかりやすく種を示す。)

……お前は? 元々、この世界の人間?
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淀橋・ニックス 2022年2月21日
あんだ、なるほど。
(大袈裟に瞬いて僕は中途の五本指を開け閉じする)
同じだ。僕も復讐者。そう、元々ここの。……
えーと。この国の?この時代ってさ、深夜でも賑やかな場所がチラホラあってね。
(僕は引き続きのたのた申し開こうとする。何故なら明らかに、彼女に対して「すべからず」をしてしまった訳で)
ここら辺は… ね。そう。静かだよな。だから僕もここで… 音楽聴いてたんだ。
(首筋の汗を冷えた微風が掠めて、僕は息を吐く。ウィンドウの向こうに眠る一足を指した)

そういうの履きたい?
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アザレア・クラン 2022年2月22日
そう。(理解を示す相槌をひとつ。)だから、詳しいのか。……確かにこの街は、夜でも信じられないくらいに明るい。(彼の指の動き。視線の行先。表情変えずにそれらをなぞる。時折言葉に詰まる、短な沈黙の合間を縫う。)
お前も、苦手なの? 人混みや、賑やかな音。

(そういうの、と示された先は。硝子の奥、目を奪われたあの一足。)……わからない。ただ、なんとなく。綺麗だと思って。(すごく不安定なものに見えるのに。)(自分に相応しくないのもわかっているのに。)
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淀橋・ニックス 2022年2月23日
(彼女の潜む闇から一旦引き上げる。澄むも澱むも人の気次第といった都会の夜空を見上げた)
苦手かもしんねえ。(ひらりと手を振って)いや苦手な時もある。かな。今日はそういう心地だったんだけど。
(僕は無意味に歯列を見せて笑った)
きみを見たら反射的になんか。一人でいたかったろうにごめんよ。
(言いつつ立ち去る気は無いとする)

綺麗だね。(もう一度、華奢なそいつを見つめた)
歩きづらそうだけども。似合うと思うぜ、きみに。
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アザレア・クラン 2022年2月24日
(同じ世界に立っているはずなのに、闇の外側と内側で、境界線を引かれているみたいだ。)(だから、小さくても何か、どこか、“同じ”を探そうとする。無意識に。無自覚に。)(そっちもこっちも、そう変わらないよと言われたい。)
…… 構わない。ひとりに慣れているだけで、ふたりが嫌いなわけではないから。
お前こそ、……?(一人でいたい気分だったのではないの。と、聞こうとして。なんかと濁された意図を拾えず、瞬く瞳。)

似合う……だろうか。(足元を見る。より早く走れと調整され続けた、白い足を。) ここの人らは皆、こういう靴を履くの?
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淀橋・ニックス 2022年2月27日
履く人もいれば履かねぇ人もいるかな。
(軽率だよな。されども僕は重ねる)
ああ、似合うと思うよ。
(而して。隔てられた僕らを彼女がもどかしく感じたか、僕自身何を求めるのか、知ることもなく境界へ踏み出す)
へへ。そんなら、もう少しだけ一緒してもいい?折角だし。
(街灯の光が飲まれるあたりで)
ナンパってわけでもねぇんだけど。ええと。(まごついて)僕は淀橋と言うよ。お姉さんの名前、聴いてもいいかい?
(後ろ頭を掻いた)
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アザレア・クラン 2022年2月28日
(硝子の奥を見る。)……履ける人が、限られているのだろうか。隣に立つだれかが、挫いたときに手を差し伸べてくれるだれかが、傍にいるひと。(偏屈で。ネガティブで。本気で思ってもいないことを言う。)(でも、だから――と繋げるには不自然だが、自分には似合わないのではと感じた。)

 いいよ。 (少年の面影がよく見えることを期待して、頷いた。現に距離は縮まって、冬に似合う氷の色をした瞳を見上ぐ。)
……名前? アザレア。(名乗り、) ( ひとしきり見つめた後、視線は先ほど持て余されていたイヤホンへ。)
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淀橋・ニックス 2022年3月1日
そんなこたぁねぇべ。
(僕は存外あけすけな声を出した。彼女の棲む薄闇の縁で、尻込んでる割には。)
どっちかてーと僕は、そんなデリケートなの履きながら構いなくガンガン歩く人を(足踏み)思い浮かべたな。それに、あんつうかきみは、そんな感じに歩いていける人だと。思えた。

(しかし案の定、僕のざれ事は外壁のサイディング材に跳ね返り、冷えた石畳に吸われてしまう。ならばと僕は影に押し入る。藍色の髪を見下ろせる傍まで。)

アザレア、か。宜しくね。
(やっとこさ柔和に笑いかけて、)
ん。こいつ?(掌で転がす黒いワイヤレスのカナル型)
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アザレア・クラン 2022年3月3日
(俯き、足許を見下ろす。)(再び上げると、少年は同じ薄影の中。街灯のおかげでよく見えていた、目の色と表情が翳る。)(代わりに、距離は近い。背丈がより高く感じる。)……それは、褒め言葉?(気を悪くしたわけでなく、純粋に意図を尋ねるトーン。)

ん。……よろしく。淀橋。(愛想のいい笑顔はないが、眼差しは真摯に。)
(こくり、)見たことのないものだったから。なんだろう、って。
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淀橋・ニックス 2022年3月9日
(同じ翳りに属した僕は、安らぐように息を吐いた。もっと早くこうして隣合ってしまえば良かったなどと調子づく。寄るも隔たるも人の気次第なのだ。)
褒め…(さりとて言い淀み)
ああ。(けれども頷く)そうだよ。かっけぇじゃんか。なよなよして頼りないより、さ。

ええとね。イヤホンてやつ。これは見たことある?
(僕はスマホを取り出した。時を止めたミュージックアプリの画面を示す)
こっから流れる音楽をね、コレで聴いてんの。
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アザレア・クラン 2022年3月12日
(傍に立てば呼吸が伝わるだろう。生きているということが。確かに此処に居るということが。)(それは互いに同じだった。)
……そう。男性は、強い女性より守りたくなるような女性が好ましいのだと思ってた。(必ずしもそうではないということを知る。少なくとも、この時代においては。)

(取り出された端末を見、頷く。)(ターミナルで一度説明を受けた。この小さな機械一つで様々なことができると。使い方はよく知らないけれど。)……そこから流れる音楽を、(イヤホンに視線移し、)……それで?
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淀橋・ニックス 2022年3月17日
(頬に張り付く冷気は変わらなかったし、示し合わせた様な静けさにも変わりはなかった。けれど彼女と潜む闇溜まりには、何処かしら排他的な安寧があった。)
(今この時僕らは互いに、かけがえの無い隣人であったのだ)

どうだろう。僕は…そうだな。ひたむきに戦う子の為なら盾になんのも吝かじゃないって、思うかな。
(嘯いて、割に畏まった声で僕はそう話す)

ああ。こんな感じに。
(『遠くから来た』人の尖った耳に、僕はイヤホンを近づけてみせた。微かに流れ出すのはチルポップなユルユルのビートだ)
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アザレア・クラン 2022年3月22日
(切り取られた小さな世界に並ぶ二人。互いに名前しか知らぬまま、ぽっかりとした夜の空虚を埋める。)(それでよかった。彼の声には温度があった。)
……そう。(どっちだって構わない風に頷いて見えたのは、元より愛想がなく表情変化に乏しい所為か。はたまた彼自身の心境の所為か。)

――……(指が。)(正確にはイヤホンを片方手にした彼の手が。耳元へ近付く。尖り耳は一瞬上向きに立ち、まもなくして下がる。)(音を、受け入れた。) ……不思議な音が聞こえる。(知識にある楽器からは想像のつかない音。もっと複雑に絡み合う、なのに調和のとれた音楽。) これが、淀橋がいつも聞いている音楽?(……なぜか少しさみしい気持ちになる旋律。…な気がする。)
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淀橋・ニックス 2022年3月31日
うん。
(「そう」と彼女は発した。それきり、とるべき形を持たない答えは、彼女と僕の狭間で音もなく漂っていた。そば近い顔を視る。僕の僅かな気後れを見つけ出すこともなく、黒瞳はそっと息づいている)

(尖った耳が率直な動きを見せるので、少しばかり微笑ってしまう)
不思議な音。だろうね。ん。こういうのとか、もうちょい賑やかなんも聴くべ。
(ピコピコと跳ねるネオトランスに切り替えながら、僕は白い耳の有りようを見守った)
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アザレア・クラン 2022年4月4日
…――!(突然変わる曲調に、一旦は落ち着いていた耳の先がまた跳ねる。)(じっと聴き入り、リズムを追いかける。)(真夜中の静かな街並みには不釣り合いの、でも決して外に漏れることのない音楽。)
……さっきとは、全然違うね。(言っておきながら、そういうものだと理解している。多面的で、だからこそ人同士は理解を深めるために知ろうとする。) 他に、何曲くらい入ってる?
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淀橋・ニックス 2022年4月9日
ふ。
(参った。控えめに言って僕は、初めて遭った尖り耳族の尖り耳に心奪われていた。正確に言えばその身動きに、だ。彼女の耳は彼女の感情表現のおおよそを担っているように思えた)

うん。様々だよ。
(僕はそっとシューズの先でリズムを取る。黙りこくった都会の夜で、ささやかな反抗を試みるように)

こういう感じは、好き?
ん〜〜そうだな。ざっと…600くらいかな。
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アザレア・クラン 2022年4月19日
(とん、とん、と流れる音に合わせ、軽やかに打ち鳴らされるリズム。)……好ましいと、思う。夜なのに、明るい場所にいる気持ちになれる。

……そんなにたくさん?(思っていた以上の曲数に、声色変わらずとも聞き返す。)(すべてに耳を通すとしたら、どれくらいの時間がかかるだろう。)(だけど、折角だから。)

……もう少し、聞いていてもいい?(夜は、まだ長い。)
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アザレア・クラン 2022年5月6日
(そうしてしばらく、二人の間には同じ音楽が流れていた。)(とある、真夜中の狭間の話。)
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アザレア・クラン 2022年5月6日
〆【来訪に感謝】
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